第1222号
2006年12月20日(水曜日)発行
平和を考えさせる3冊
本のおばさん 新井竹子
辺見庸著(毎日新聞社)
九条を守る力がありてこそ日本国ぞと世界がみてる
こう詠んで、私のこの二年間ほどは九条を守ることに集中しています。
このことを励ます本がたくさん出版されていますが、ぎりぎりの体験から生み出されたアレン・ネルソンさんの『戦場で心が壊れて』(新日本出版)にはハッとさせられるものがあります。
ネルソンさんは書いています。
「権力者はお金を持っているけれど、人々は力を持っているのです」
そう、私たちは周りの人々と話し合い連帯することで力を持つことができるのです。「九条の会」の運動は正にこれだと思います。
二〇〇六年九月に出版された『ここが家だ』―ベン・シャーンの第五福竜丸―(構成・文アーサー・ビナード・集英社)もまた引きつけられる絵本です。絵もすばらしく、日本の漁港・海に働く人々をまざまざと見せてくれます。十一月始めに私はベン・シャーンの原画を見ました。
空から降ってくる白いものを見上げる二人の漁師。その白いものは、水爆実験の灰なのです。見上げる漁師の顔の意志的な表情は、核兵器を持つことを許さない力を見る者に与えます。
まだまだ多量に平和を願う本は出ています。
埼玉県東松山市には「平和資料館」があります。なぜ「平和資料館」と命名したかというと、平和な時代が長く続いているのだから、維持し続けている平和をこそ伝えねばということだったと思います。
あれこれ考えている時に出会ったのが、『いまここに在ることの恥』(辺見庸・毎日新聞社)です。この題にいたく引かれました。
購入して読んでみると感動したのは、後半の部分でした。朝鮮戦争の時の視点です。
「朝鮮の人々を殺した米軍機はどこから発進したか。平和憲法下の日本からです」
これを読んで私は打ちのめされた思いでした。
その次に出会ったのは「現実に戦後日本が米国の戦略的枠組の中でしてきたこと、それは憲法の破壊以上ではないか」
何という正しさ。参ったというしかありません。でも、ここまでも思考しなくてはいけない今なのかもしれません。
(親子読書地域文庫全国連絡会副代表)