トップ 婦民とは? 婦民新聞 主張・見解 イベント情報 入会案内 部会の部屋 支部の部屋 お問い合わせ / 交通アクセス

婦人民主クラブ > 婦民新聞 > 過去の記事 > 第1216号

第1216号

2006年10月20日(金曜日)発行

憲法・旅日記 III大震災後、10年を経過して(9)
被災者への支援策はー金持伸子

ところで大震災の翌年、一九九六年の二月から三月にかけて、兵庫県が応急仮設住宅四万八千三百戸の全戸を対象に、入居者の状況を、調査員による訪問、聞き取り調査で実施した。それによると有効回答をえた三万七千百七十六世帯のうち、世帯主六十五歳以上の世帯が一万三千四百二十八世帯、そのうち単身世帯が五一・二%、二人世帯が三八・九%。収入は家族全員の収入をあわせて百万円未満が二九・三%、二百万円未満が二三・一%、三百万円未満が一七・二%と七割ちかくが三百万円未満の世帯で占められるなど、大震災の被害が高齢世帯や低所得層に集中していることが、改めて調査結果にもはっきりと示された。

これらの結果から、兵庫県では住宅復興計画のなかで、公的借家の供給戸数を増やすなど一定の手直しをせざるを得なくなるのだが、ここではこのように経済的にかなり窮迫していた被災者への支援が、どのようになされたかを記しておこう。

わが国で災害被災者への支援は、災害救助法による避難所の設置、応急仮設住宅の供与のほか、炊き出し、水、被服、寝具その他生活必需品の給与または貸与など現物給付が中心である。「被災者を元気づけることが、被災からの立ち上がりの基本であり、元気づけの即効薬は速やかな現金給付である」と多くの識者から指摘されたが、実現することはなかった。

その結果、あとで若干の追加支給があったとはいえ、被災者への一律支給は、全壊・全焼世帯に義損金十万円と兵庫県援護金十万円をあわせて二十万円、半壊・半焼世帯には、義損金十万円に兵庫県援護金五万円の十五万円が支給されたに止まった。とくにわずかな年金や、中小零細企業で働く勤労者、自営業者が大半を占める応急仮設住宅入居世帯の生活が、いかに厳しいものであったかはいうまでもない。

また、大震災では、総額千八百億円ちかくの巨額の義損金が、被災から数か月で寄せられたのだが、配分方針に手間取り、最終的に配分が終了するまでに、二年数か月もかかったことを、忘れることは出来ない。日本赤十字社は一九九六年十月に、義損金は、市民の善意に基づく「慰謝激励」の見舞金であり、「被災者の当面の生活を支えるもの」であるから、「公平に一律性と迅速性」を基本に一気に配分することが必要であると、「報告書」にまとめている。

(日本福祉大学名誉教授)

▲ページ上部へ