第1210号
2006年8月20日(日曜日)発行
日本国憲法成立の過程を描く
長編劇映画 「日本の青空」製作の意図を語る大沢豊監督
監督の大沢豊さん
故鈴木安蔵氏の日記を手掛かりに描く日本国憲法誕生のドラマです。戦後、鈴木氏が中心となって活動した「憲法研究会」の憲法草案は、連合国軍総司令部(GHQ)の憲法草案づくりの「手本」になったといわれます。監督は、学童疎開、東京大空襲、沖縄戦など、反戦平和を訴える数々の作品を手がけてこられた大沢豊さん。
「鈴木安蔵氏は京都帝大の学生だった一九二六年に『学連事件』(全日本学生社会科学連合会の指導的メンバーが治安維持法の本土での適用第一号として弾圧を受けた事件)で検挙され、それをきっかけに憲法学を学んで民衆の立場に立つ憲法学を成立させたという人なんです」
「いま憲法を改悪して日本を『戦争する国』に変えようとする動きが盛んですが、もってのほかのことですね。戦中戦後を通して民主的な憲法づくりに奮闘された鈴木氏の業績をクローズアップさせることで、この動きに真向から反対する映画をつくりたいと思いました」と大沢監督は語ります。
物語は――二十二歳の沙也可は「月刊アトラス」編集部員の派遣社員。特集「日本国憲法の原点を問う!」で先輩編集員たちと並んで沙也可にも企画を出すチャンスが与えられる。沙也可は母の助言を得て、全く名も知らなかった在野の憲法学者・鈴木安蔵の取材を進めることに。安蔵の娘・耿子(けいこ)と露子への取材に成功した沙也可は、戦時下の安蔵の憲法学者としての苦労と偉大さを知ることになる。そして――。
生き生きした現代の若者像あり、涙も笑いもあるドラマです。「たくさんの人たちに日本国憲法のすばらしさを再確認してもらえるような映画にしたいですね」と大沢監督。十一月に撮影を開始、来年一月の完成を目指します。
▼製作実行委員会では、映画の総予算二億円をまかなう「製作協力券」の普及・販売を呼びかけています。券は一枚千円とし百枚分(10万円)が一口。全国どこの上映会でも鑑賞できる券です。
連絡先03(3524)1565
鑑賞券は婦民事務所にもあります(一枚でも可)。
薬用植物園を見学して
快適な環境に必要な良質の緑
薬用植物園の職員の案内で見学
広井敏男さん
婦民東京都支部協議会では七月二十五日、小平市にある東京都薬用植物園を見学、職員に広大な園内を案内してもらい、薬草についての説明を聞きました。
この植物園は東京都福祉保健局健康安全研究センターに属する試験研究機関で千六百種の薬用植物を収集栽培しています。主に脱法ドラッグや健康食品、ダイエット食品などの指導・取り締まりに向けた植物の鑑別や試験・研究です。
一般にはアヘン法によって栽培を禁止されている種類のケシや大麻など麻薬の原料となる植物の栽培のほか、園内を一般公開して民間薬の原料になる植物や有毒植物の知識の普及、絶滅危惧種の保護、繁殖にもつとめています。
桃やアンズ、ボタン、シャクヤクなどは漢方薬に使われる植物なので、春・秋には花を見に来る人々も多く、研修室で映像による解説もしてもらいました。薬事資料館では山菜とまちがわれやすい有毒植物の展示もありました。セリとドクセリ、フキノトウと有毒のハシリドコロなど。
園内見学後は東大和支部の北原陽子さん宅に移動して、広井敏男先生(元東経大学教授)に、自然の大切さと都政についての次のような話を聞きました。
――日本の環境破壊は世界に例を見ないひどさで、一九七〇年代には国民の公害反対闘争もあったが、世界の経済学者たちに「日本の経済活動による環境破壊は公害であり殺人だ」といわれたほどだった。アメニテイ(快適な環境)とは、人間らしく暮らす上でなくてはならないもの、それがあるべき所にあることをいう。その条件の一つが「良質の緑」で、そこに生物の賑わいがみられなければ良質とはいえない。薬用植物園は貴重な場所で絶滅危惧種を六十種育てている。ムラサキという植物もその一つ、万葉集にある「あかねさす紫野行きしめ野行き野守は見ずや君が袖振る」のムラサキの咲く野原は今はない。風景の中で体感することで真の理解が得られる。風景は自然と人間が共に作り出した文化財である。人間は、自然と他の生物との交渉なしには進化することができなかった。石原都政はこの貴重な植物園を廃止または半減しようとしている――。
お話のあと、薬用植物園存続を都協として要請しようと申し合わせました。