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第1204号

2006年6月10日(土曜日)発行

今に生きる宮本百合子の文学
没後55年文芸講演会

宮本百合子没後五十五年文芸講演会「百合子の文学を語る集い」が五月十九日東京・四谷区民ホールで開かれ、四百八十人の参加者で埋まりました。日本民主主義文学会、多喜二・百合子研究会、婦人民主クラブの共催。

  日本民主主義文学会会長の森与志男さんが開会あいさつ、記念講演は森まゆみさん(作家)と澤田章子さん(文芸評論家)、若い世代の代表として新潮新人賞を受賞した浅尾大輔さんの発言、有馬理恵さん(舞台俳優)の『播州平野』朗読がありました。

  浅尾さんは若い人たちのグループ「百合子を読む会」が七年目を迎えたこと、今読んでいるのは『十二年の手紙』で、一九三〇年代の百合子と顕治の往復書簡から、いま新たな戦時下≠ニもいえる時に、百合子の文学が自分たちの行動の行き先を照らす光源となっていることを感じると語り、憲法が変えられようとしている時代の書き手として、学びつづけて自分の言葉を獲得し、ねばり強く抵抗していきたいと決意をのべました。

  森まゆみさんは「駒込林町の百合子さん」と題して東京・文京区駒込動坂町に住み、百合子と同じ誠之小学校に通った自分の大先輩である百合子について、その成育環境をさまざまなエピソードをまじえて語りました。

  百合子の家の周辺は学者や文化人が多く、父母も知識人の恵まれたくらしで、百合子は長女として糖尿病の母を助け、よく弟妹のめんどうをみたこと、母が十人生んだうち三人しか成人しなかったこと、魂のふるさと&沒での祖母とのくらし、語り合える人*上弥生子、荒木茂との結婚・離婚の苦悩、湯浅芳子と共に三年すごしたソビエト、戦時下での明るさを失わない奮闘ぶりなどを生き生きと語りました。


講演する澤田章子さん

  澤田章子さんは「戦禍のなかの百合子」と題して講演しました。百合子は十七歳の時『貧しき人々の群』で農村の貧困と矛盾をリアルに描き、そこに自己変革のテーマも加えて文学生活を出発。二十代で『伸子』を書き、知的で向上心にみちた女性が因襲にとらわれない愛を育てたいと苦悶する姿を発表しました。

  その後、革命後十年のソビエトや世界恐慌のヨーロッパを見て資本主義のゆきづまりとファシズムの危機を感じ、社会主義の優位性に確信を持って日本の民衆と共に歩む作家になる決意で帰国。すでに弾圧が始まっていたプロレタリア文学運動に身を投じ、五回の検挙・投獄、二回の執筆禁止など迫害のなか、十二年間獄中にあった夫、宮本顕治と共に法廷闘争をし、戦争協力に追い込まれた同時代の作家の多いなか、思想・信念を貫きました。

  百合子の文学と生き方は、憲法が脅かされ、将来に明るい展望が見えにくい今こそ、勇気と示唆を与えられ励まされるとのべました。

  閉会のあいさつは婦民の一戸葉子会長が、六十周年を迎えた婦民と百合子のかかわりを紹介し、大きな拍手で閉会しました。

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