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第1195号

2006年2月28日(火曜日)発行

「邂逅」

 本窯を焚き終えた翌朝、特急列車で私は夫と年末の大阪へ向かった。

 大阪市立美術館での「モンペリエ ファーブル美術館所蔵品展」最終日、そこに見逃がすわけにいかない一枚の絵があったからだった。

 十数年前、南仏モンペリエまで行き、この美術館を訪れたのに閉館中で入れずこの絵を見ることが出来なかった。「邂逅」は最も気になっていた未見の絵画の一枚だった。

 待望のこの絵の前に立った途端に雑念がふっ飛んだ。目がよくなったような感覚と共に、描かれたばかりのような新鮮な画面に惹き込まれた。

 クールベは自分の絵を買ってくれる支持者、ブリュイアスの熱心な誘いと招きに応じて初めてモンペリエを訪れた。ブリュイアスは従者と愛犬を伴いクールベを出迎えた。その出逢いの瞬間をクールベは絵にしたのだった。

 失意にあったクールベはブリュイアスに暖かく迎えられ、およそ五か月の滞在中に油絵を制作した。二人は画家とパトロンの関係を越えて強い友情で結ばれた。その出逢いを記念し、クールベは心をこめて「邂逅」を描いた。二人の関係はその後もこわれることなく続いたという。

 マチスから、クールベをよく観よ、と師硲伊之助はすすめられたという。とくに、クールベのヴァルール(色価)の正確さに注目するようにと。「邂逅」は空の色が遠くに広がり、人物の位置、距離の関係も的確な色で処理されている。

 マチスとクールベは一見異なる世界のようだが、マチスの絵は見れば見るほど対象に忠実に迫って色彩で真実を描いていることが得心させられる。クールベは神話や物語に題材を求めず、想像に依らず、見えるがまま、ありのままに描いた対象が、そこに在る、そこに居るという実感をもって迫り、写実に徹した厳しさがある。それがマチスの「リアリズム」と拮抗するという発見は、いまの私に力を与えてくれそうだ。

 幻想や虚構ではない身近な、生きた現実に対して慈しみをもつこと、目をこらすこと。モチーフもその辺から生まれそうだ。昨年晩秋、畑友だちが掘り出したばかりのさつまいもを私にくれた。洗ったらとても美しい赤紫色を放っているので水彩で写生した。いまそれを下絵に大皿に取組んでいるところである。(色絵磁器画工)

橋ものがたり

カワセミも来る素朴な木橋
埼玉・川越市 桁橋四橋

木橋の1つ(安比奈親水公園内)

 川越市の入間川河川敷に広がる安比奈(あいな)親水公園内にある四つの桁橋を訪ねました。

 広々とした芝生の中央に入間川から分水した小川が流れ、素朴でしっかりした赤茶色の小さな欄干付き木橋が架かっていました。

 橋の上に立ったとき、るり色の羽を輝やかせてカワセミが水面を飛びました。カワセミは獲物をねらって行ったり来たりし、「飛ぶ宝石」を披露。人工的小川ははや自然を形づくり、川端には葦が茂り、浅瀬には白サギがゆっくりとエサをついばんでいました。

 川岸の遊歩道を歩いて行くと数十メートルの間隔で木橋が現れます。欄干付きが二つに低いヘリのみの橋二つ。

 四つの橋はボンゴシ橋とも呼ばれます。ボンゴシとは西アフリカ産の木で、高さ五十メートル、直径二メートルに達し、耐腐食性に優れ、防腐剤を使わなくても二十五年くらいは持つそうです。日本でも北海道の大蔵山ジャンプスキー場や長崎のハウステンボス、各地の橋の材料として使われています。

 西アフリカの木が日本に運ばれ、木橋となって散歩する人に木のぬくもりと木組みの美しさを与えてくれているのです。

 機能一点ばりのコンクリート製の橋と違い、うるおいと優しさをもった木橋は、各地の公園や人道橋として人気ですが、植林など地球環境に配慮してこそ持続可能です。

 空には凧が上がり、ハンググライダーの帆が風にふくらむのどかな公園。足もとには春のさきがけ、イヌフグリの空色の花がいっぱい咲いていました。(悠)

 安比奈親水公園は西武新宿線南大塚駅よりタクシー

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