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第1194号

2006年2月20日(月曜日)発行

七味
「あんまりだ!!」

二月十日付の毎日新聞に小さい記事が載りました。見出しは「あんまりだ!!」

 イラクで二十五歳の米兵士が路上爆弾で重傷を負い除隊。その兵士に米陸軍は手当ての際に廃棄された血まみれの防弾ベストの代金約八万三千円を請求。兵士は同僚から集めたお金で支払ったが、議会で「非人道的」と指摘されて陸軍が返済したという内容

 米国防総省は日本にも不当な要求をしています。沖縄の米海兵遠征軍司令部などのグアム移転費用を出せと。八十億j(八千八百八十億円)です。日本政府はこの支出のための特別措置法案を検討中

 また防衛施設庁が発注した在日米軍施設の建設工事に「談合」疑惑が浮上しています。日本が負担する必要のない米軍への「思いやり」予算で落札率百%の工事とは、国民を二重に裏切る税金の使い込みです。さらに米軍再編に関して地方議会が反対決議など出さないよう監視することを、防衛施設庁が各地の防衛施設局に要請した事実も明らかになりました

 アメリカには至れり尽くせりの大盤振る舞い。国民には医療改悪や大増税。豪雪地帯の被害救済や耐震偽装のマンション購入者への支援にこそ「思いやり」予算を組むべきでしょう。トリノ五輪の歓声に隠れて、狂牛病の米国産牛肉が再輸入されるおそれもあります。それを食べて脳障害を発症しても「自己責任」というつもりでしょうか。あんまりです。

子どもをどこに連れていくの?
譲れない戦前への逆戻り

 立教大学コミュニティ福祉学部教員 浅井春夫さん 

1951年、京都生まれ。日本福祉大学大学院修了。専門分野は児童福祉論、セクソロジー。共著『「福死国家」に立ち向かう』(新日本出版社)、著書『子どもの権利と「保育の質」』(かもがわ出版)他

一月二十八日、婦人民主クラブ子ども部会が担当する学習会が東京都内で開かれました。同部会では「子どもをどこに連れていくの―教育基本法から教育勅語に逆戻り」のテーマで学習会を開いてきましたが、今回は子どもたちの現在、未来を見つめ、子どもの心になって考えてみようと、立教大学教員の浅井春夫さんを講師に「戦後六十年・子どもたちは今」と題するお話をききました。

 『子どもを大切にする国、しない国』(新日本出版社 二〇〇六年三月刊)、これが今年の私のスローガンです。「子どもを大切にしない国」は、その国の人間と未来を大切にしない国ということになります。

  その次に考えているのは「人間を大切にする国、しない国」。そして次には「戦争をする国、しない国」、つまり福祉を真面目に考える立場からいえば、最も非福祉的なものは戦争だからです。この三部作を考えています。こうした問題意識から「戦後六十年、子どもたちは今」というテーマを考えていきたいと思います。

*自己肯定感の低さ

 構造改革・規制緩和を推し進めるこの国の政治のもとで、人の命に対する公の責任の放棄がますます露わになっています。こうしたなかで私たちは、子どもと家族の実情をきちんと見ていく必要があります。

  子どもたちにとって今、一番心配な問題は何か、それは自分を好きになれない子ども、自己肯定感・観を持てない子どもが非常に増えていることです。自分を好きになれなければ、他の人を好きになれるはずがありません。そこから他に対する暴力やさまざまな問題行動を引き起こすことになります。そして自分に対する最大の問題行動が自死です。国際的な調査からみても、自分を価値ある人間だと思える子どもたちの割合が非常に低いのが日本です。これは相当に深刻な事態だと思います。

*共に生きる力育む

 「子どもの権利条約」では、自立という言葉をきわめて抑制的に使っています。これはこの条約の見識だと思います。一人で生きていけるということは大切なことですが、それが人生の目標ではないと思うからです。自立を前提に共に生きる力をどう育んでいくか、それが教育や保育の分野でも、子育てにおいても問われています。共に生きるための前提条件が自立ということだと思います。

  人間が生きていくうえで何を大切にしなければならないかを、おとなが子どもたちに提起していくこと。それが「人生案内」です。自己肯定感・観を根幹において、人生案内、自立、共生、楽しい居場所の四つの方向があるのではないか。これが私の子どもをみる時の大ざっぱな一つの考え方です。

*少子化の要因には

 今、少子化ということが声高にいわれています。でも問題にしたいのは出産率の数字ではありませんね。私たちが求めているのは安心して子どもが生める社会です。

  少子化にはいくつかの要因が考えられます。@子育てにお金がかかる、A精神的肉体的負担の増加、B女性が働きにくい職場と社会、C家庭における子育ての協同の問題、Dおとなたちが余裕をもてない生活などがあげられます。

  Dについて労働時間の問題をあげると、日本政府は千八百時間労働の一律目標を放棄して、現在、千八百五十三時間といっていますが、これはパート労働者の増加にともなう見せかけ上の時短であり、実際には一般社員で二千十六時間です。対するにドイツ千五百二十五時間、フランスは千五百五十四時間、何と日本の労働者は年間約五百時間も余計に働いていることになります。

  ドイツでは労働時間短縮と育児休業などを親時間と位置づけ、家族としての責任を果たすための時間を大切にするために労働時間を短くしようということが、国民的合意のなかで進んできています。

先生のお話に笑って、感動して

*譲ってはいけない

 子どもを大切にする国としない国との、国内総生産(GDP)に対する家族や子どもへの公的支出をみていきましょう。

  二〇〇一年の主要国の平均は一・九%、デンマークは四%、対する日本は〇・六%です。小学校前の教育に対する公共支出の対GDP比(一九九八年)をみると、デンマーク六・八%、スウェーデン六・三%、フィンランド五・七%、なんと日本は三・五%。OECD(経済協力開発機構)諸国の平均は五%です。

  日本でも、千代田区のように条例で子育て施策の「財源確保の目標」を定め、一定の努力をしている自治体もあるのですが。

  学力第一で注目されているフィンランドでは、一週間のカリキュラムの中に空白の時間があります。子どもの進度状況を見ながら、教師が自分の裁量でうめていくのです。日本の管理主義教育とは大違いです。

  近年、卒業式の歌さえ管理するようになりました。なぜ「君が代」を歌わない教師を処罰するのか、それはものいわぬ教師をつくり、子どもたちを管理する教育現場をつくるためです。この延長線上にあるのが「戦争のできる国」です。「子どもたちをどこへ連れていくのか」明らかなことですね。この子どもたちに対するもっていき方、これは決して譲ってはいけないところだと思います。

*ニュージーランド

 子どもを大切にしているニュージーランドでの体験をお話ししましょう。

  保育園を訪ねて園長さんに「何を大切にしていますか」と質問すると、返ってきた答えは「子どもが好きなことを見つけて集中して取りくめる時間」ということでした。達成感も含めて、そこから自己肯定感も生まれるのではないかと思いました。

  「人のいやがることをしない」これは人権尊重です。もう一つ「食べものを大切にすること」。『世界子ども白書』によれば、今、五歳までの子どもが伝染病と飢餓で年間一千万人も死んでいるといいます。このことを子どもたちにどう提起するかということについても話されました。

  「保育指針」で示された課題で一番大切なのは子どもの「幸福」でした。日本では子育ての中で幸せ格差がどんどん広がっているのが現状ですね。次に大切なのは「一体感」(所属感)、参加(公平な機会の保障)、コミュニケーション、探求とつづきます。

  また子どもにかかわる専門職、保育者に問われる力量としてあげられたものの中から「ヨカッタ探しのできる力」を特に大切だと思いました。この言葉の中には、私たちが子どもとかかわる時の大切なものがあると思います。

*強い気概をもって

 私たちは今、本当に大へんな時代に生きています。この時代を変えていくために、「テロ以外は何でもやろう」というくらいの強い気概をもって立ち向かっていきましょう。 浅井先生のお話の後は参加者からの質問・感想がつづきました。杉並区の中学校の教師は、昨年夏採択された「新しい歴史教育をつくる会」の歴史教科書で子どもたちに教えなければならない悩みや、親たちと話す機会がもてなくなっている現状を。若い女性からは自己肯定感を持てない子どもには「お国のために役立て」と戦場に引き出す政策では、との危惧も語られました。浅井先生は今日本では官から民への流れの中で子どもの安心・安全が脅かされている。しかし公でやるべきことは公が責任をもつのが世界の本流、このことに確信をもちましょうと参加者を励ましました。 

 浅井先生のお話の後は参加者からの質問・感想がつづきました。杉並区の中学校の教師は、昨年夏採択された「新しい歴史教育をつくる会」の歴史教科書で子どもたちに教えなければならない悩みや、親たちと話す機会がもてなくなっている現状を。若い女性からは自己肯定感を持てない子どもには「お国のために役立て」と戦場に引き出す政策では、との危惧も語られました。浅井先生は今日本では官から民への流れの中で子どもの安心・安全が脅かされている。しかし公でやるべきことは公が責任をもつのが世界の本流、このことに確信をもちましょうと参加者を励ましました。

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