主張・見解
機能性表示食品の安全性は国の責任で
婦民新聞第1776号(2024年8月10日号)より
小林製薬「紅麹」を原料にした機能性表示食品による健康被害が疑われる死者数が七十六人になったと、六月、厚労省は明らかにしました。
健康のためと信じて摂取していた食品で命まで奪われたのです。
「健康食品の機能性表示を解禁する」。二〇一三年六月、安倍晋三総理大臣(当時)は成長戦略のスピーチで宣言し、二〇一五年四月に機能性表示食品制度は、導入されました。
届け出には臨床試験データは必須ではなく、科学的根拠を示す文献を提出すればよいのです。
国の審査はなく、当初から安全性などへの懸念が指摘されていました。
二四年一月現在、届け出数は八千に迫り、なお右肩上がりで増えています。
市場規模も四千五百億円と推定されています。消費者庁に届け出れば、商品パッケージに機能性を表示できます。
国は届け出を受けるだけで責任はないということです。
九一年に制度化された特定保健用食品(トクホ)は、国の審査と許可が必要です。
機能性表示食品制度は安全性を置き去りにした制度といわねばなりません。
紅麹サプリの甚大な健康被害を受け、政府は五月三十一日の関係閣僚会議で健康被害情報の報告の義務化や、GMPと呼ばれる製造規範を守ることを義務付けるなど制度見直しの対応方針をとりまとめました。
しかし、必要なことは食品表示基準の改正などではなく、根本的な見直しで、安全性、機能性について国が直接責任をもつ法制度を作ることです。
企業の利益優先の現制度では、国民の安心は得られません。