主張・見解
食料自給率向上を放棄する農政基本法改定
婦民新聞第1763号(2024年3月20日号)より
岸田内閣は二月二十七日、食料・農業・農村基本法改定案および関連法案を閣議決定し、国会に提出しました。
日本の食料自給率が下がり続けカロリーベースで三八%となったことや、広がる輸入自由化の影響、安定した食料供給のための価格保障・所得補償が不十分であることなどについて、根本的な解決が求められてきました。
今回の見直しの中で、「食料自給率向上」の目標を指標の一つに格下げしたことは大問題です。
食料自給率の向上なしに、国民一人ひとりが良質な食料を安定的に入手できるという「食料安全保障の確保」などできないからです。
また「安定的な輸入及び備蓄の確保を図る」とこれまでより食料輸入の位置づけを強化しています。
再生産可能な農産物価格について、国の責任で農業経営者を支える姿勢は見られません。
農業の持続的な発展のために必要な新規就農者の支援や農業後継者対策も全くありません。
さらに「食料供給困難事態対策法案」では、異常気象や家畜等の伝染病の発生、その他の事象による食料供給困難事態に対応するため、対策本部を設置し、米、小麦、大豆等の農林水産物の安定供給のための措置をとることを定めています。
これは有事を想定し、生産・流通に携わるものに協力させ統制を図ろうとするものです。
食料自給率を向上させ、安全な国産の食料を安定的に供給するには、平時から農業予算を増やして、農家の所得保障など農業従事者を支援する等、農業政策を充実させることこそが必要です。