主張・見解
生保基準引下げは違法、国は判決に従え
婦民新聞第1735号(2023年4月20日号)より
国が二〇一三年に決定した生活保護費の基準引き下げを違法とし、減額処分取り消しを命ずる判決が続いています。
二十九都道府県で約千人が、生活保護基準を引き下げたのは生存権を保障する憲法二五条に違反するとして訴訟を起こしています。
判決が出ているのは十八件、うち九地裁が国に違法性があるとの判断を下しました。昨年十月の横浜地裁判決からはじまり青森・和歌山・宮崎・さいたま、四月十一日の奈良地裁まで原告が連続して勝訴しています。
当時の厚生労働省が独自算定した物価下落率指数は実態に合わず「厚労相の裁量権の逸脱、乱用であり違法」との判断が、国敗訴のほとんどの判決に共通して下されています。
生活保護基準引き下げは、二〇一二年の総選挙で安倍政権が「生活保護費一〇%カット」を公約に掲げたことが始まりでした。その結果一三年八月から三年間にわたり、生活扶助の基準額を平均六・五%引き下げ、計約六百七十億円を削減しました。影響を受けたのは利用世帯の九六%に及びました。
生活保護基準の引き下げで、この十年間利用者は苦しい生活を強いられてきました。また基準の引き下げにより最低賃金はじめ、多くの社会保障制度が影響をうけてきました。国は控訴せず、早期決着をめざすべきです。
コロナ禍と物価上昇で、国民のくらしはますます厳しくなっています。社会保障切り捨てに反対し、誰をも取り残さない政治の実現を求めていきましょう。