主張・見解
報道の自由を脅かす放送法解釈は撤回を
婦民新聞第1732号(2023年3月20日号)より
今国会の質問で、安倍政権当時の、放送法の「政治的公平」の解釈変更を巡るやりとりが書かれた総務省作成の内部文書が、行政文書であることが確認されたうえ、公開されました。
放送法四条は「政治的に公平であること」等と規定し、公平かどうかは一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するという立場が長年とられてきました。今回の文書には、二〇一四年十一月から一五年五月にかけ、当時の礒崎陽輔首相補佐官が、ある番組の内容が公平でないとして、安倍元首相の指示により、総務省に対し新しい解釈を強く求めた状況が記されています。
一五年五月、当時の高市早苗総務相は国会で「一つの番組でも、極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」と、これまでの解釈を変える答弁をしています。一六年には、政治的公平性を理由に電波停止を命じる可能性にも言及しています。今回、質問を受けた高市氏は、「全くの捏造文書だ」と主張しています。
放送法は、太平洋戦争中にラジオ放送が統制され、政府に都合のいい放送により国民を戦争に動員した反省に立ち、表現の自由を保障する憲法二十一条に基づいて、一九五〇年に制定。放送の不偏不党、事実及び自立を保障することにより表現の自由を確保すると掲げています。
政府が、政権に批判的な番組に圧力をかけるため、特定の番組を狙い、放送法の解釈を変えることはあってはなりません。
岸田政権に、この問題の徹底解明と、解釈の変更の撤回を求めていきましょう。