主張・見解
「経済安保」法の恣意的な運用を許すな
婦民新聞第1718号(2022年9月30日号)より
九月四日、都内のある大学の量子暗号研究グループが、防衛省防衛装備庁の資金提供を受け、委託研究を行っていることは問題だと地元の市民、研究者などが、「経済安全保障法」の講演会を開きました。
「経済安全保障推進法」(経済安保)は、五月十一日、日本共産党を除く各党の賛成で可決、成立した、経済、科学技術を軍事に組み込む法律です。しかし、法律の中身についての具体的な説明はなく、施行後に政省令で決められる事項が百三十八か所もあり、実際の運用は政府に白紙委任されます。
最先端技術やその研究開発は、そのまま軍事目的に転用できるので、経済安保の柱となる政策です。国家が安全保障を大義として、巨額の研究費を提供して学問研究に介入します。開発に関わって情報を扱う人には、罰則付き守秘義務が課せられます。
特許出願の非公開制度が導入され、政府は軍事技術を非公開の秘密特許に指定できます。これは戦前の制度の復活です。
電気、鉄道など、基幹インフラの安全確保のためとして、それを担う企業は、納品業者、委託業者などを事前に政府に報告。
政府はそれを審査し、勧告・命令を行います。こうした統制の一方で「安定供給確保支援」の名目で特定企業に資金援助が行われます。これは政治・官僚・業界の癒着を生むことにもなりかねません。
岸田総理は、年内策定予定の国家安全保障戦略に「経済安保を位置づける」としています。この法律の政府による恣意的な運用を許さぬよう、世論を広げていきましょう。