主張・見解
五輪は中止し、コロナ対策に全力を
婦民新聞第1675号(2021年5月20日号)より
変異株ウイルスが猛威をふるい、新型コロナウイルスの感染拡大が収まる見通しが立ちません。政府がコロナ対策第一の政策を持たないことに大きな責任があります。感染者が六十六万七千人、死者が一万千人(五月十三日現在)を超える中、菅首相は五輪開催ありきの姿勢を変えません。国会で追及されても「感染対策をしっかり講じ、国民の命と健康は守る」と繰り返すだけです。
医療従事者のワクチン接種が済まないうちに高齢者を対象にワクチン接種を始め、七月末までに完了という政府計画ですが医療従事者確保のめどは立っていません。
日本では感染者が自宅での隔離を余儀なくされ、重症であっても適切な医療が受けられず亡くなってしまうという医療崩壊の危機にあります。
命と健康が脅かされ、不安がぬぐえない現状は世論調査に表れ、読売新聞の調査では「中止」が五九%、元日弁連会長の宇都宮健児さんが中止を呼びかけた署名には数日で三十万人を超える賛同が寄せられ、海外メディアも相次いで中止の論評を発表しています。
選手の派遣を断念した国もあり、参加選手を選考できない状況もあるなかで果たして公正な大会となりうるでしょうか。選手のためにワクチンを確保したIOCの対応は市民と選手に分断を持ち込むことにならないでしょうか。感染対策第一のために、選手と市民との自由な交流もかなわないのでは「平和と友好」を理念とする五輪とは言えません。
日本政府はただちにオリ・パラ中止を決断し、コロナ対策に全力を尽くすべきです。