主張・見解
今こそ包括的なハラスメント禁止法を
婦民新聞第1613号(2019年4月30日・5月10日合併号)より
女性活躍推進法等の一部改定法案が、四月十二日、衆院本会議で審議入りしました。
政・官界をはじめとする一連のセクハラ行為や言動に対して、女性団体や労働組合、市民が声を上げる中で、ようやくハラスメント対策が法制化されようとしています。
しかし政府・厚労省案は極めて不十分で、実効性が疑われる内容と言わざるを得ません。
政府・厚労省案では、ハラスメントを「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当の範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害されること」と捉えています。
しかしハラスメントは必ずしも優越的な関係を背景とするとは限りません。
またこれでは「業務上の合理性や必要性」があればハラスメントに該当しないということになりかねません。
ましてハラスメントは就業関係が害されるといった程度の問題ではありません。
人間の尊厳、人格、人権を侵害する重要問題です。
法案にはその最も大事な中身が抜け落ちています。
さらに、セクハラ、マタハラ、パワハラ対策がそれぞれ別の法律に書かれていることも問題です。包括的なハラスメント禁止法が求められます。
日本政府は国連女性差別撤廃委員会から、セクハラ禁止法整備をくり返し勧告されています。
この六月に開催されるILO(国際労働機関)総会で採択が予定されるハラスメント禁止条約案にも「ハラスメントの法的禁止と制裁措置」が謳われています。
今こそこの国際水準に見合う法整備が必要です。さらに世論と運動を広げていきましょう。