主張・見解
「核なき世界」と矛盾する「近代化計画」
婦民新聞第1523号(2016年6月10日号)より
二日間の主要七か国首脳会議(伊勢志摩サミット)終了後の五月二十七日夕刻、バラク・オバマ米大統領は広島へ向かいました。原爆投下を正当化する声がまだ根強いアメリカの現職大統領が被爆地広島を訪問することは、オバマ氏にとってかなり勇気のいる決断だったことでしょう。それにしても滞在時間が一時間足らずでは短すぎました。原爆資料館視察はわずか十分ほど。その後、安倍晋三首相と共に原爆慰霊碑に献花し演説しています。「七十一年前、明るく晴れ渡った朝、死が空から降り、世界が変わってしまった」という十七分の演説は、二〇〇九年、「米国は核を使用した唯一の核保有国として行動への道義的責任がある」と演説してノーベル平和賞を受賞した当時の熱気も緊張感も感じられないものでした。メディアは好意的に報じても、苦しみぬいた被爆者の方々はどう感じたことでしょう。
しかもオバマ氏は「核なき世界を目ざす」といいながら、一方で旧式化した核兵器やその運搬手段であるミサイルなどの近代化計画のために、今後三十年間で一兆j(約百十兆円)の予算の投入を承認もしているのです。核軍縮も彼の政権下では進んでいません。
また昨年、米国防総省が公式文書で沖縄返還合意の際の日米間の「核密約」をあきらかにしました。一九七二年の沖縄本土復帰は「核抜き本土並み」が目標でしたが、「核密約」は有事の際に核を持ち込むために沖縄の四基地に核貯蔵庫を置くというもの。世界の人民の真の願いとエネルギーが結集しない限り「核なき世界」は実現しません。