主張・見解
生活保護制度拡充求める世論を広げよう
婦民新聞第1403号(2012年7月30日発行)より
「不正受給が横行している」「働くより生活保護をもらった方が得だ」などと、生活保護をめぐる国民の「不公平感」をあおる報道が続いています。これらの報道は、厳しい雇用情勢の中で就労に努力している人、病気治療中の人、親族の援助を受けられず「孤立」を余儀なくされている高齢者など、多くの生活保護利用者の心と名誉を傷つけています。
一連の生活保護攻撃を先導したのは自民党。生活保護給付水準の一〇%引き下げや稼働層を対象とした生活保護期間「有期制」の導入などを盛り込んだ自民党の政策について野田首相は大方の理解を示しました。今回、民自公三党が密室談合で決め、衆院を通過させた「社会保障制度改革推進法案」には、「自己責任」と「家族の助け合い」が強調され、給付は抑制がつらぬかれています。
すでに一九八〇年代から「適正化」の掛け声のもと、憲法や生活保護法の理念に反する保護行政が行なわれてきました。病気で働けないのに就労を迫って辞退届を書かせ餓死させた北九州の事件をはじめ、福祉事務所が申請を受けつけない「水際作戦」で孤立死する悲劇は後を立ちません。さらに福祉事務所への警察官OBの配置は七十四自治体に広がりました。
いま生活保護制度で重要なことは、必要な人に手が届いていないことです。憲法二十五条で保障された生存権を破壊する改悪を中止させ、「最後のセーフセィーネット」として役割が果たせるような生活保護制度の拡充を求める世論を広げていきましょう。