主張・見解
構造改革ではなく被災地の真の復興を
婦民新聞第1364号(2011年5月10・20日発行)より
三・一一大震災は、日本社会が抱える諸問題を露にしました。
まず燃料不足で暖房や輸送ができず、被災者の生活を一層悲惨なものにしました。阪神淡路大震災の時は、避難所でも灯油は豊富でした。なぜこんなに違うのか。この間行なわれたのが小泉「構造改革」でした。二〇〇二年の石油業法廃止で政府は石油製品の安定的供給の義務がなくなり、全てを市場にまかせたことによるものです。
農業と漁業で成り立っていた被災地域は、工業優先政策の下で過疎化、高齢化していました。津波からは逃れたのに避難所で体調を崩し、病院も介護施設もなく、生命を落とした高齢者はかつてない数にのぼるといわれます。病院を減らし、福祉を切り捨ててきた結果、被災していない地域でも、よそからの病人を受け入れる余裕はありませんでした。「構造改革」が国民生活を破壊し、被災地の困難を増幅したのです。
いま瓦礫の中から人々が立ち上がろうとしています。放射能汚染した農地や漁場、海水に侵された農地や津波に奪われた漁労の道具など、失われたものを取り戻し、生業を再開できる地点に立てるようにするのは政府の責任です。ところが復興構想会議から聞こえてくるのは零細農漁民の経営復活ではなく、これをチャンスに農地の大規模化・漁港の拠点化を進めて大企業の進出をはかる「構造改革」のかけ声です。
これでは生活の復興はできません。人々の生活が成り立ってこそ国の経済が発展することを政府は認識すべきです。真の復興をかちとるために力を合わせましょう。