主張・見解
ソマリア沖への海上自衛隊派遣に反対する
婦民新聞第1290号(2009年1月30日発行)より
政府・与党は「海賊対策」を口実に、現行自衛隊法を最大限に拡大解釈し、海上自衛隊をアフリカ北東部ソマリア沖に送ろうとしています。派兵を急ぐ背景には、米同盟国に加え、中国なども派兵しているという状況のもとで、オバマ米新政権からの軽視を恐れる事情があるともいわれます。
ソマリア沖で海賊が横行するようになったのは、ソマリアが二十年以上続く内戦で政府も経済も崩壊し、漁民などが仕事を失ったことが背景にあります。しかし海賊行為はあくまでも犯罪です。取り締まるのは警察であり、日本の場合はまず海上保安庁の活用を考えるべきなのです。にもかかわらず海賊の重装備を理由に「能力をこえる」と海上保安庁を最初から除外するのは自衛艦派遣の強行が本音だからといわざるを得ません。
麻生首相の狙いは海賊対策を名目に急いで自衛艦を現場に送り込み、その一方で「派兵新法」を制定するという二段構えで、外国船舶の護衛と武器使用に道を開くことにあります。これは憲法九条への政府自身の解釈すらないがしろにし、集団的自衛権の行使にまで踏み出すことにほかなりません。
このようなソマリア沖への派兵は、アメリカが求める、いつどこへでも、どんな形態でも派兵できる自衛隊の海外派兵恒久法制定にむけ、さらに歩を進めるものでもあります。この危険な麻生政権の暴走を許すわけにはいきません。海賊問題の根本的解決には、ソマリアの混乱終結と復興のための国際協力が不可欠であり、そこにこそ憲法九条をもつ日本の役割があります。