主張・見解
生活の最低保障制度確立へ声を上げよう
婦民新聞第1217号(2006年10月30日発行)より
五月に北九州市で五十六歳の一人暮らしの男性(身障者手帳四級)が、数次の生活保護の申請を無視された結果、餓死状態で発見されました。孤独死事件が続発している同地域の生活保護を大幅に圧縮する方針は、とくに母子世帯にはいっそう厳しく、世帯数に占める保護の割合二・〇八%は、他の政令都市の十分の一という異常さです。
貧困と格差拡大の下、北九州市をモデルにしての生活保護の削減施策を全国的に進めている現状とその実態を、日本弁護士連合会の報告(全国生活保護一一〇番の調査)が明らかにしています。
日本の生活保護世帯は、二〇〇五年度月平均で百万世帯を突破(厚労省報告)しました。
政府は「歳出削減」の名で、生活保護費の大幅カットを進め、今年四月から老齢加算を廃止、七月閣議決定の「骨太方針二〇〇六」には、@母子加算(二万円)の廃止、A生活扶助基準の引き下げ、B「リバースモーゲージ制度」(所有不動産を担保にした生活資金貸付制度で生活保護は受けにくい)の導入(〇七―〇八年度実施)を明示しています。
生活保護基準の切り下げが、労働者全体の賃金引き下げ、長時間労働による生活の貧困化を招くことは、ワーキングプア問題に関する現国会の議論が示しています。歴史的にナチスの例をみても貧困はファシズムをつくり出す土壌になります。今こそ生活保護の実態を明らかにし、連帯を強め、憲法の生きるナショナルミニマム(国が保障すべき最低限度の生活水準)を築く運動へ大きく声を上げましょう。