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第1269号

2008年5月30日(金曜日)発行

こんにちは
「生存権裁判」に力をつくして


弁護士 新井章さん

「東京生存権裁判」が六月二十六日、判決を迎えます。生活保護費の老齢加算・母子加算廃止の違憲性を問うものとして九都道府県十裁判所に原告百十六人が提訴して闘ってきたものです。東京生存権裁判弁護団長として、この闘いに力を尽くして来られた新井章さんのお話をききました。

「老齢加算は一九六一年から約半世紀、七十歳以上の生活保護受給者の生活を支えてきました。単身世帯の月十万円足らずの生活保護費から、約二割もの老齢加算を奪うことは高齢者の生存まで脅かすものですね」

新井さんが弁護士として最初に取りくんだ社会保障裁判が、一九五七年に始まった朝日訴訟でした。朝日茂さんが、当時の月六百円の貧弱な生活保護費(生活扶助費)では憲法二十五条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を維持することはできないと国を相手に起こした訴訟です。一九六〇年、歴史的な安保闘争のさなか一審で勝利判決をかちとりました。

「老齢加算の始まる前年のことですね。この判決は国の生活保護基準を引き上げさせる決定的な契機となりました」

朝日訴訟は「人間裁判」とも呼ばれました。新井さんはその名付け親です。「いま争われている生存権裁判は、朝日訴訟につぐ重要な裁判です」

二〇〇三年、小泉内閣は五年間で二兆円もの社会保障費削減の方針を打ち出しました。アメリカ流の新自由主義の考え方に立つ規制緩和路線は雇用の流動化・破壊を招き、生活保護水準以下の賃金で働く労働者が急増しました。福田自公政権もこれを引き継いでいます。

「よく生存権裁判はぜいたくだという声をききますが、生活保護基準の引き下げは、単に生活保護を受ける人たちだけの問題ではありません。最低賃金であれ、年金であれ、ほとんどあらゆる分野の切り下げのもとになります。裁判のなりゆきは自分にも直接に関係するものだと、とらえることが大事ですね」

もう一つ大切なことは「現憲法と戦前の旧憲法との大きな違いです。現憲法では八十一条で違憲審査権を裁判所に与えています。憲法に照らして、国会が定める法律や政府の行政措置が違憲と判断されるならば無効にできるのです」

提訴から一年四か月、「非常に早い判決です。裁判所の特別な配慮が感じられます。質の高い、良い判決が示されることを願っています」

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